はじめに
十分に明るいスペクトル線源の自己相関データがあれば、 振幅較正にテンプレート法を用いることが出来ます。 高品質の自己相関データからテンプレートスペクトルデータを作成し、 そのテンプレートデータを他の全ての自己相関データをフィットすることで 振幅較正の解を得ます。 AIPS では タスク ACFIT で実行し、SN テーブルが振幅較正解として得られます。
準備
- 質の高いスペクトル線データが必要です。 観測計画の段階で、明るいスペクトル線を持つフラックス較正天体の観測を 盛り込んでおいて下さい。 フラックス較正天体の観測頻度は、30分〜1時間に一回が理想です。
- 解析時の ACFIT の実行の前に 必ず相関器出力データの正規化の作業が済んでいる必要があります。 AIPS タスクで言うと、ACCOR 実行後となります。
- 自己相関データを用いた振幅のバンドパステーブルを作成しておいて下さい。 すなわち、BPASS や CPASS 実行後となります。
- ACFIT の入力データとして、下記の通り テンプレートデータ と 全局全時間データ を用意します。
テンプレート
タスク SPLIT を用いて、自己相関データからテンプレートデータを作成します。 このときの留意点は以下の通りです。 VLBA ユーザーを主対象にした AIPS Cook Book 9章の記載とは必ずしも一致しません のでご注意下さい。
- 開口能率とTsys値が既知の、感度の良いアンテナを一局選ぶ。
- EL が十分高いときの観測時間帯を選ぶ。 1ないし2スキャン分程度でよい。
- docalib 1 に設定し、読むべきCL テーブルの 番号を gainuse の後に入力する。 CL テーブルには ACCOR の解が含まれることが必要。
- doband 1 に設定し、読むべきBP テーブルの 番号を bpver の後に入力する。 このときの BP テーブルの振幅値は自己相関データから作られたものであることが必要。
- 自己相関データが必要なので、aparm(5) は 必ず 1 ないし 2 と設定する。 デフォルトの 0 のままだと相互相関データのみになる。
全局全時間
上記のテンプレートデータをフィットするための、 全局全時間の自己相関データを作成します。 テンプレートと同じ様にタスク SPLIT を用います。
- 全アンテナを選ぶ。antenna 0。
- 全観測時間を選ぶ。timerange 0。
- docalib 1 に設定し、読むべきCL テーブルの 番号を gainuse の後に入力する。 CL テーブルには ACCOR の解が含まれることが必要。
- doband 1 に設定し、読むべきBP テーブルの 番号を bpver の後に入力する。 このときの BP テーブルの振幅値は自己相関データから作られたものであることが必要。
- 自己相関データが必要なので、aparm(5) は 必ず 1 ないし 2 と設定する。 デフォルトの 0 のままだと相互相関のみのデータとなり、較正がうまく実行されない。
開口能率
6.7 GHz メタノールメーザー源によるテンプレート法では、 山口32m鏡の自己相関データでテンプレートを作ることを推奨します。 ACFIT ではテンプレートデータのアンテナの開口能率あるいは DPFU [K/Jy] の値が必要なので、 以下の通り、 6.7 GHz データの山口32m鏡のテンプレートデータ取得時の値をあらかじめ計算しておきます。
- まず、テンプレートデータを作った時の timerange で設定した時間帯における天体の EL を UP-TIME PLOT などであらかじめ求めておく。
- Perl が実行出来る環境にて dpfu6ymg.pl をダウンロードする。
-
perl dpfu6ymg.pl
とタイプして実行する。すると、以下の表示が現れる。
--------------------------------------------- YAMAGUCHI 32m C-band DPFU and Antenna Efficiency calculation --------------------------------------------- Elevation [deg] ?
ここで先程求めた EL [度] を手で入力すると、
と、開口能率と DPFU の値が表示される。--------------------------------------------- Antenna Efficiency at C-band = ***** DPFU at C-band = ***** ---------------------------------------------
Tsys値
Tsys 値を得る方法は、 ANTAB 用の外部読込テキストファイルのシステム雑音パートの作成法 と同じです。
- この観測の山口の Tsys ログファイルを用意する。
-
perl [ツール名] [Tsysログファイル名]
とタイプして実行する。
- 時刻と Tsys 値が出力ファイル ( 例:U09001.YMG.TSYS.ANTAB ) に記述される。 テンプレート作成時の SPLIT の timerange の時間帯の Tsys 値の平均を求めておく。
例:
perl tsys6ymg.pl u09001_Tsys_YM.log
例:
テンプレート作成時の timerange が 03:50:00 から 04:10:00 だとする。 Tsys 値は以下のうち赤字の部分なので、この値の平均をとって Tsys = 221 K とする。
! ! Tsys Part for the YAMAGU32 Telescope ! TSYS YAMAGU32 FT = 1.0 TIMEOFF = 0.0 / ! DOY UT Tsys 001 02:59.99 219.5 001 03:13.99 223.3 001 03:24.99 219.9 001 03:30.99 215.1 001 03:57.99 223.7 001 04:03.99 215.1 001 04:07.99 222.9 001 04:35.99 222.9 001 04:41.99 225.3
ACFIT実行
ACFITを実行することにより、 振幅較正値が入った SN テーブルが新しく出力されます。
- getn で全局全時間データを、 get2n でテンプレートデータを読み込む。
- refant を、先程のDPFU値とTsys値を得た 局に設定する。ここでは山口32m望遠鏡。
- bchan および echan を フラックス較正天体のスペクトル線のピーク周辺に設定する。
- 先程求めた DPFU 値の逆数 (1/DPFU) を aparm(3) および aparm(4) に入力する。
- Tsys 値を xparm および yparm に入力する。