超巨大ブラックホール近傍から噴出する
電波ジェット根元のふらつき現象を発見

プレスリリース:2015年7月27日

発表概要

 山口大学大学院理工学研究科の新沼浩太郎准教授,韓国天文宇宙科学研究院の紀 基樹特任上席研究員,宇宙航空研究開発機構の土居明広助教,国立天文台の秦 和弘研究員,永井 洋特任准教授,マックス・プランク電波天文学研究所の小山翔子研究員で構成される研究チームは、これまで不動と思われていた電波ジェットの根元の位置が、ジェット噴流の軸に沿って大きく“ふらつく”新しい現象を発見しました。活動銀河中心から噴出する電波ジェットは長年観測されていますが、根元が大きくふらつくことを直接検出したのは世界で初めてとなります。

 今回、共同研究チームは地球から約133メガパーセク(4.3億光年(注1))の位置にある活動銀河(注2)マルカリアン421 (Mrk 421) の中心核付近で起こったX線大爆発現象の直後から約7ヶ月間にわたって、超長基線電波干渉計(VLBI)(注3)である国立天文台のVERA電波望遠鏡(注4)を用いて、特に「相対VLBI」(注5)と呼ばれる観測手法を駆使した高空間解像度かつ高頻度のフォローアップ観測を行うことで電波ジェット根元の大きな“ふらつき”を捉えることに成功しました。

 この“ふらつき現象”は、超巨大ブラックホール近傍での活動が活発なときに噴き出すプラズマ塊の速度の違いによってプラズマ塊同士が衝突する場所が大きく変化することによって生じている、という理論モデルでよく説明されます。また、“ふらつき”の大きさは、(1)プラズマ塊の速度が従来考えられていた速度よりも速いこと、および(2)電波ジェットの根元と銀河中心核の超巨大ブラックホールが30光年以上離れているときがあること、を示唆していると考えられます。今回の新発見は、長年の謎となっている活動銀河中心核ジェットの形成メカニズムを理解する上での新たな手掛かりのひとつとなることが期待されます。

図1

図1.本研究成果を模式的に示した図.(地球の画像:©気象庁ホームページ,他の画像:©山口大学)


研究成果のポイント


研究チーム

   新沼浩太郎(研究代表者:山口大学大学院 理工学研究科 准教授)
   紀 基樹(韓国天文宇宙科学研究院 特任上席研究員)
   土居明広(宇宙航空研究開発機構 助教)
   秦 和弘(国立天文台水沢VLBI観測所 研究員)
   永井 洋(国立天文台チリ観測所 特任准教授)
   小山翔子(ドイツマックス・プランク電波天文学研究所 研究員)
  


発表論文について

 発表雑誌名  The Astrophysical Journal Letters, vol. 807, L14
(オンライン版:2015/07/01公開 http://iopscience.iop.org/2041-8205/807/1/L14/article
 論文タイトル  Discovery of a wandering radio jet base after a large X-ray flare in the blazar Markarian 421 
 著者  K. Niinuma, M. Kino, A. Doi, K. Hada, H. Nagai, S. Koyama
 DOI番号  10.1088/2041-8205/807/1/L14
 要約URL  http://arxiv.org/abs/1507.04082


詳細については以下をご覧下さい。


Last Updated: 2015.07.27 ©2015 Yamaguchi University