本研究で検出された”ふらつき現象”は、「電波ジェット根元は常に不動である」という従来の理解を根本からくつがえす発見となりました。この最初の発見をきっかけに、今後は世界中でこの”ふらつき現象”の直接検出を目指した多くの電波観測が提案、実行されることが予想されます。
一体なぜMrk 421とM87とで得られた結果に、電波ジェットの根元とブラックホールとの間の距離に、これほど大きな違いが生じるのでしょうか?ひょっとするMrk 421とM87の電波ジェットの根元は、実は全く異なるメカニズムで形成された、性質の異なるものなのかもしれません。また、ジェット軸を地球から見込む角度の違いも電波ジェット根元の性質の違いに影響しているのかもしれません。 今後は、こうした高速プラズマ塊を生み出す理論的メカニズムや電波ジェット根元の新しい理解に向けた研究が活発になることが期待されます。
本研究の観測の鍵となったVERA電波望遠鏡による「相対VLBI」観測を、今度は韓国のVLBI観測装置(Korean VLBI Network)を連動させたKaVA電波望遠鏡によって行おうとする試みもはじまっています(日韓VLBI観測網についてはこちら)。この拡張によって、さらに高い位置決定精度でふらつき現象の探求が期待できます。 また、より高い周波数帯(ミリ波)でVLBI観測を行う試みも活発化しています(国内で行われた試験観測についてはこちら)。より高い周波数帯でVLBI観測を行うことによって、ジェットのさらに詳細な構造を電波撮像する進展につながっていきます。