研究紹介

――― 星形成領域の研究 ―――

 星は星間ガスから生まれます。星間ガスとは宇宙に広く分布する希薄なガスで、その濃い部分が何らかのきっかけで収縮すると、星が誕生すると考えられています。この過程を星形成といい、宇宙における重要な現象の一つと考えられています。
 太陽の質量を8倍以上も超えるような大質量の星は、様々な意味で宇宙の重要な天体であると考えられています。たとえば、宇宙における元素合成・元素の進化には大質量星の中で生じる核融合反応と、終末期に超新星爆発が必要です。爆発後に残される超新星残骸は、宇宙線加速の源であると考えられています。また大質量星は強力な紫外線と恒星風によって周囲のガスを圧縮し、次世代の星の形成を促すと考えられています。大質量星は極めて明るいので遠方にあっても観測でき、様々な観測上の指標となります。
 このように重要な大質量星ですが、その形成過程は現在でもよくわかっていない部分があります。大質量星が形成するときに、どのような現象が見いだされるのか、何が起きているのか、それを電波観測によって解明する、これが宇宙電波観測センターの一つの目標です。

――― 活動銀河核の研究 ―――

 ブラックホールという言葉を知らない人がいないほど、ブラックホールという天体は多くの人を魅了するようです。極めて強力な重力によって光も吸い込んでしまう、そのため暗い穴のようになっている、というのが、ごく簡単なブラックホールの解説です。ではブラックホールはどこにあって、どんな姿をしていて、どんな性質を持っているのでしょうか。意外なことに、宇宙にはブラックホールが実にたくさん存在することがわかってきました。
 恒星が1000億個も集まって形作っている天体が、銀河です。宇宙のどこを観測しても、銀河が見えます。銀河は宇宙を構成する基本的な天体です。私たちの太陽系も「銀河系」という名前の銀河の中にいます。この銀河の中心部分に、巨大なブラックホールが存在していることがわかってきました。驚くべきことに、大部分の銀河はそれぞれの中心にブラックホールを持っているのです。しかもそのブラックホールの質量は、太陽の1億倍もあるものが珍しくないのです。つまり、宇宙には巨大なブラックホールがあちこちに存在するのです。
 ブラックホールは強力な重力で光を吸い込みます。もちろん周囲の星間ガスもどんどん吸い込みます。吸い込まれかかったガスは、1万度以上の高温となり、ブラックホールの周囲を円盤のような形になってぐるぐる回ります。これを降着円盤と呼びます。降着円盤は強烈な光、紫外線、X線などを放射します。また、吸い込まれかかったガスの一部が、どういうわけか、吸い込まれずに高速なジェットとなって噴出することもあります。このジェットは強力な電波を放射します。つまり、銀河の中心にある巨大なブラックホールは、周囲の降着円盤とジェットが強烈に光る(光や電波を放射する)ため、遠くから見ればとても明るく輝く天体として見えるのです。これを活動銀河核と呼びます。
 これはまるで見てきたような説明ですが、実は降着円盤の形を実際に観測してみた人はいません。広い宇宙の中ではあまりに小さいため、形を観測できないのです。またジェットが出ることはとてもよくわかっているのですが、なぜジェットが出るのかと言えば、それはまだよくわかっていません。私たちはまだ、活動銀河核の本当の姿と性質を良く知りません。その性質、とくにジェットを観測することによって、その性質を解明する、これが宇宙電波観測センターのもう一つの目標です。

――― その他の研究 ―――

 宇宙には電波を出す天体が数多く存在します。むしろ、ほとんどの天体が電波を放射していると言ったほうがよいでしょう。たとえば星間ガス・ダスト、超新星残骸、惑星状星雲、太陽系の天体の熱放射、宇宙背景放射、パルサーなど、種類も物理的な状態も様々です。このような様々な天体・現象から、宇宙電波観測センターでは、山口32m電波望遠鏡の観測に適したものを選んで観測による研究を行っています。

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