日食の観察方法

太陽の観察は目に対する障害の危険性があります。
決して、望遠鏡や双眼鏡で太陽を見てはいけません。
肉眼で直接太陽を見るのも危険です。
正しい観察の方法を理解しましょう。

危険性の説明や、正しい観察の方法は、以下のリンク先に詳しい説明があります。
ビクセンはまぎんこども宇宙科学館国立天文台せんだい宇宙館世界天文年2009

参考資料

日食観測を教育に使う方法(PDF)

日食の計算(PDF)

日食計算ワークシート(エクセル)

日食を観測しよう(パワーポイント)
日食を観測しよう(PDF)

日食観測を教育に使う方法

1. はじめに
 日食は、宇宙で起きている現象を直接観察できる良い機会です。2009年7月22日に全国で部分日食が見られますので、この機会をうまく使って、多くの子供たちに宇宙・自然観察の面白さに気づかせたいと思います。そのためには、ただ太陽が欠けているのを観察するのではなく、目的を決め、適切な方法に従って観測を行うと良いでしょう。何らかの形で「測ってみる」と、いろんなことに気づくものです。小学生から大人まで楽しめる日食の観測方法をいくつか紹介します。

2.日食の開始・終了時刻
2−1.時刻の測定
 日食の最初の欠け始めを第一接触、欠け終りを第四接触といいます 。日食がいつ始まって、いつ終了するか、この第一接触と第四接触の時刻を正確に計ろう、というわけです。たったこれだけのことですが、やってみるとなかなか面白いものです。
 必ず必要なのは時計(できるだけ正確な時計、文字盤が大きなものが良い)だけです。電波時計やGPS機能付き携帯電話なら常に正確なので好都合です。望遠鏡もあると良いでしょう。太陽を肉眼でずっと観察するのは目に悪いですから、太陽投影板のついた望遠鏡などを使って投影法で観察するのが望ましいです。
 日食が始まる前にNTTの時報(117番)を聞きながら正確に時計を合わせます。時計を横に置いて、日食が始まる時刻の少し前から観察を始めます。誰かが毎秒の時間を読み上げると、雰囲気が盛り上がります。日食の始まりに気づくのはなかなか難しく、はっと気づいた時にはもうずいぶん欠けていた、ということもあります。大勢で観測し、欠けていることに最初に気づくのは誰か、競争するのも面白いでしょう。
 この観測で大切なことは、できるだけ自分の観察に忠実に(人の言葉や予報の値に惑わされず)、そして正確に記録することです。日食開始の時刻が測定できたら、必ず秒まで正確に記録しましょう。
 日食の終了時刻の測定も同様です。ただし日食は開始から終了まで数時間かかります。最後まで待つのは大変ですから、無理はしないようにしましょう。

2−2.日食開始・終了時刻の計算と実測
 日食の開始・終了時刻を自分で計算して、そして実際に自分で測定してみます。うまくいけば1秒程度の誤差で計算値と測定値が一致します。科学に強い関心を持つ子供や大人にとって、これは最高に面白い実験です。計算は大変細かく面倒ですが、自分で計算して自分で確かめるという理論と実験の両方を組み合わせた体験となります。理科が好きで思考力も計算力も根気もある高校生にやってほしいと思います。
 日食の計算方法は『日食の計算』資料に詳しく記述しました。

2−3.先生が計算し、生徒が測定
 小中学生には日食の計算は難しいので、計算は先生が行い、生徒がそれを実際に測定してみる、というのが良いと思われます。先生の予言通りに日食が始まれば、先生に対する生徒の尊敬が増すことは間違いありません。ごく簡単に計算するためにエクセルのファイルを作りました。

ノート:計算と実測の差
 日食の開始時刻は計算の結果どおりに測定されるわけではありません。計算と実測の差の要因をいくつか挙げてみます。
 結局、計算間違い、観測の誤差、月の凸凹がほとんどの原因です。
 月の凸凹を考えれば明らかなように、必ずしも計算値は真の値ではありません。とかく「正解」を求めがちですが、このような実験や観察は「真の値を追及」するために行っているのであって、計算値が「正解」ではないことに注意してください。

3.事前学習:日食の進行図
 日食の観測の前に、日食がどのように進むのかを学習しておくと良いでしょう。
 あらかじめ先生が太陽と月の位置関係(太陽を中心として月がいる方向(方向角)、太陽と月の距離、月の大きさを)を計算して数値の表を作っておき、それを生徒が図に描くというのが面白いと思います。
 分度器と定規、コンパスを使って下の図のように描くことができます。太陽の前面を月が通過して日食が起きるのだ、ということが理解されるでしょう。
 簡単な計算方法、数値の表の作り方などもここに用意しました。


日食の事前学習で経過図を描いてみると面白い


4.スケッチ
 日食が始まったら、定期的に、例えば10分に1枚スケッチを描くと良いでしょう。あらかじめ下のようなスケッチ用紙をスケッチする時間分だけ用意し、時間ごとに太陽を表す円(例えば直径10cm)の上に欠けた形を描き込むのです。日食の最初から最後まで続けると、15枚程度のスケッチができます。これをぱらぱらマンガにすると、太陽面を月が通過していったことが実感されるでしょう。


日食のスケッチ用紙の例

 太陽の周りに「天頂」と「天の北極」という線がついています。この2つの線は先生があらかじめ計算して描いておきます。
 スケッチするときに方向の基準が必要になるので、頭の真上の方向を「天頂」の線が指し示すようにスケッチ用紙を定めて、描き込むようにします。
 スケッチが完了したら、事前学習で作った日食の進行図と比べてみましょう。このときには「天の北極」の線が真上に来るようにします。こうすると太陽面を月が通過して行った様子が良くわかります。小学生なら形の一致度を確かめ、中学生以上は数値化してグラフにすると面白いでしょう。数値化の方法は、例えば太陽の直径に対する欠けた部分の比率(食分)が計算と比較しやすくて好都合です。
 「天頂」と「天の北極」の角度、食分の予報計算の方法もこのファイルの中にあります。


食分の測定

5.多くの地域・離れた地域との共同観測
 日食は場所によって始まり・終了の時刻が違います。月の影が地球上を西から東へ移動していくためです。月の影の動く速さはおよそ1秒間に1kmです。そのため東西に60km離れた地点では日食の始まりや終わりが1分ほど異なります(もちろんこれは大まかな値です)。
 多くの地域、離れた地域の学校などで協力し、日食の開始や終了時刻を測定してみると面白いでしょう。例えば、日食の始まる時刻が1分違って観測されたら、この間に月の影が地上を移動して行ったのですよ、と子供に説明することができます。
 インターネットなどで各地の日食の状況をリアルタイムに観察できるなら、ある場所ではもう影に入っているのに、別の場所ではまだ影がやってきていない、などと説明できるでしょう。月と太陽、地球の動きを体感できると思います。
 各地の学校で日食開始、終了の時刻を測定したら、それをもちよって地図上に書き込んでみると面白いでしょう。何時何分に影がどこにあった、ということを観測結果から推定できるはずです。これにはかなり多くの学校などの協力が必要になります。日本全国的な実験イベントにすると、本当に面白いでしょう。多くの参加者の名前と測定値を書き込んだ大きな地図を作ってみたいものです。

6.日食に伴う自然現象
 日食によって太陽の明るさが減少しますので、照度計などで測定すると面白いでしょう(これも上と同じファイルに計算方法があります)。  また、日食のときに気温が低下するという報告がありますので、これを確かめてみると良いでしょう。太陽の明るさの変化と気温の関係をグラフにするのは、興味深いことです。実際には変化がほとんど現れないかもしれません。
 そのほか、動物の行動や雲に変化があるかもしれませんが、実際にどのようなことがあるのか予想できません。何もおきないかもしれません。

7.皆既日食の観察
 皆既日食はとても劇的な現象です。太陽周囲の赤く輝くプロミネンス、ダイヤモンドリング、コロナなど、いくつも観測すべきポイントがあります。観測者の周囲の風景でも、シャドウバンド、本影錐などの興味深い現象があります。皆既日食を観察できるのはごく限られた場所なので、詳しいことは省きます。
 わずか3年後の2012年には東京を含む日本の広い範囲で金環日食が見られます。このときにはまた様々な観察方法を考えることにしましょう。

8.日食の後の月の様子
 日食後の1週間は、夕空に月を探してください。毎日観察していると月がだんだん太りながら太陽から離れていく様子を観察できます。確かにあの月が太陽の前を通過して行ったのだ、ということを実感できると思います。


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