相対較正法 のリダクション法

ver. 2005Oct)

 

山口大学 土居明広


〜 目次 〜

 

1.      必要な前処理

2.      フリンジフィッティング

3.      フラックスキャリブレータの明るさ仮定

4.      セルフキャリブレーションその1

5.      相対比較

6.      セルフキャリブレーションその2

 

 


はじめに

 

AIPS を使った相対較正法のデータリダクションをご説明します。  ここでの最終目標は、各局の振幅ゲインが書き込まれたSNテーブルを獲得することです。 相対較正法は VLA で使われていますので、そのためのタスクが AIPS の中に存在します。  VLBI と VLA 両方のリダクションをやる感じになります。

 

 


1. 必要な前処理

 

通常どおり、 FITLD, MSORT, INDXR, UVFLG, ACCOR までやってください。 ここまでで、SN1 と CL2 ができていると思います。 たぶん、UVFLG がとっても大変だと思います。 ビジビリティが異常な時間帯の抜き出しは、UVPLT ではストレスが溜まるので、私は DIFMAP に出して VPLOT でやることがあります。 LISTR, POSSM, PRTAB, PRTAN, SNPLT などでの基本的なチェックもやっておきましょう。

 

 APCAL はやりません。 Tsys補正、アンテナゲイン補正、オパシティー補正に相当することは、相対較正法では全てコミでゲインキャリブレータを使ってやるからです。 ですので、TY テーブルと GC テーブルは利用しません。

 

 ところで私は、ここですでに、振幅・位相のバンドパス較正をしてしまいます。 以降のフリンジフィッティングの感度がほんのちょっと良くなることを期待してですが、キャリブレータが感度ギリギリという状況じゃないと恩恵を感じないですので、気にしないでください。

 

 


2. フリンジフィッティング

 

 フラックスキャリブレータとゲインキャリブレータを全時間帯について、FRINGします。 位相補償をやっている場合には、ここで位相補償キャリブレータについても一緒にやってしまってください。  明るいターゲットの場合も、一緒にやってしまってください。 SN2 と CL3 ができて、アレイが結合されます。 SNSMOでスムージングした人は、SN3になっているかもしれません。

 

 


3. フラックスキャリブレータの明るさ仮定

 

 AIPS にフラックスキャリブレータの明るさを教えてあげます。 SU テーブルには観測天体の情報が入っており、そこにはI, Q, U, V のフラックス密度のコラムもあります。 いまは適当な値が入っているかもしれません。 SETJY でまずこれらをリセットしたあと、再び SETJY を使って、フラックスキャリブレータの I フラックス密度に単一鏡で測定された値を書き込みます。 PRTAB で確認できます。

 

 


4. セルフキャリブレーションその1

 

  CALIBを使って、フラックスキャリブレータとゲインキャリブレータの両方について、振幅セルフキャリブレーションをします (位相も同時に解かれますが)。  ここでは、重要なのは、求めたいゲインは本質的には時間とELの関数であろう、ということです。 フラックスキャリブレータとゲインキャリブレータを比較するときには、近い時刻&近いELでのデータであるのが望ましいです。 ですから、ほぼ両者が同じ EL になる時刻に、フラックスキャリブレータの前後を2つのゲインキャリブレータのスキャンで時間的に挟んであげるスケジューリングを設定するのが最も良いでしょう。  ここでのセルフキャリブレーションでは、TIMERANGEを「両者を比較する時間だけ」に限定して実行して SN3 に書き込んでおきます。 もしこのような都合の良いスケジューリングにはできなかったときは、全時間帯でやってしまうなど、適当に妥協してください。

 

  VLA データにはアンテナゲインテーブルが付いていますし、オパシティー補正もしますので、フラックスキャリブレータとゲインキャリブレータのELが異なっていても問題はありません。 しかし連携アレイにはEL依存性が未補正のまま残っているはずですので、両者の観測のELを合わせる必要がある程度あります。 ELの影響をかなり強く受ける野辺山ミリ波干渉計の観測では、フラックスキャリブレータである惑星とゲインキャリブレータであるクェーサーのELを合わせることに気をつけています。

 

ゲインキャリブレータは点源なので気にする必要はありませんが、フラックスキャリブレータが構造をもっている場合には、構造モデルを何らかの方法で手に入れて CALIB に噛ませてください。 点源に見えるようにUVRANGE や ANTENNA を制御してもかまいません。 というのは、全アンテナで解を得る必要はないからです。 フラックスキャリブレータとゲインキャリブレータで共通のアンテナで解が得られていれば、比較ができるので、OKです。 ただし、アンテナ数を減らすときには、4局以下にはしないでください(解けなくなる)。 また、アンテナを減らした分だけ、決定精度は悪くなります。

 

CALIBは、その天体が SUテーブルに書き込まれている明るさであると思ってセルフキャルを解いてくれます。 ですから、相関振幅とフラックス密度の間のギャップを算出してくれ、SN3に書き込んでくれるのです。

 

あと、いろんなアンテナがごちゃ混ぜのVLBIでは、VLA リダクションの VLACALIB とは異なるパラメータでセルフキャルをおこなうことに注意してください。 cparm=0, soltype=’L1’にするのがポイントです。 これに気付くまで随分苦労しました。

 

できあがった SN3 は必ず SNPLT でチェックしてください。 連携アンテナXバンドの場合、10 - 100 [gain] になっているんじゃないかと思います。 感度が良いアンテナほど小さな値になっているでしょう。

 

 


5. 相対比較

 

  CALIBで書き込まれた SN テーブルから、天体のフラックスを比較して算出してくれるタスクが GETJY です。 SUテーブルにフラックス密度を書き込んだフラックスキャリブレータを基準として指定すると、他の天体の明るさを比較によって算出し、SUテーブルに書き込むと同時に、メッセージウィンドウにエラー付きで表示してくれます。 

 

IFが分かれている場合、2 IFぶん表示されるかもしれません。 2つの値が若干異なるのはスペクトル指数のせいというよりも、決定エラーでしょう。 私はこれらの平均値を SETJY を使って改めてSUテーブルに与えて、ゲインキャリブレータのフラックスを決めます。 もし、片IFの値が異常でしたら、それは適宜無視するのが良いかもしれません。

 

  PRTABSUテーブルを確認してください。 

 

 


6. セルフキャリブレーションその2

 

  ゲインキャリブレータは明るさのわかっている点源ですから、理想的なキャリブレーションソースとなりました。 ゲインキャリブレータについて、全時間帯で CALIB を実行させて得られるSN3テーブルには、正味のゲインパラメータが出力されるはずです。 これが欲しかった「あなたの観測専用のゲインテーブル」です。 CALIBではついでにセルフキャル位相項もSN3に書き込んでくれていますが、別に欲しくはなかったし、混乱の元になるかもしれませんので、SNCORでリセットしてしまいましょう。

 

SN3をSNPLTで確認してください。 明らかに異常な値があれば、SNEDTしましょう。 また、参加局が少ない観測や、ゲインキャリブレータが暗い場合には、解が時間的にバタついて見えるかもしれません。 たぶんこれは決定エラーですので、SNSMOでスムージングするのもいいかもしれません。 ゲインは基本的にガクッとは変化しないはずで、1時間程度の変動が本質的だと思われます。

 

この SN テーブルを、全天体の全観測時間に内挿して CLCAL してください。 CL4ができます。 これでノミナルな振幅較正は終了です。 

 

位相補償観測ではない人は、これで解析はほぼ終了です。 BPも適用して SPLITしてください。 位相補償観測をしている人は、位相補償キャリブレータの解析に進んでください。 位相補償キャリブレータが点源の場合ならこのまま CALIBに突入してもよし、かなり構造があるなら SPLIT, FITTP してDIFMAPでモデル作ってAIPSに戻し、CALIBするのが良いでしょう。

 

イメージングをしてみるとわかりますが、ダーティイメージは非常にキレイです。 各局の相対ゲインが数%以内の精度で決まっているからです。 

 

 


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